【ChatGPTを活用しよう】プロンプトエンジニア入門講座
レッスン内容

この項目でできるようになること

  • メモリ機能の有効性について理解する
  • カスタム設定の機能と使い方について理解する
  • メモリ機能とカスタム設定の有効な組み合わせを理解し活用できる

メモリ機能の概要

メモリ機能は、ChatGPTがチャット内容から重要と思われる内容を記憶し、より会話文脈に即した精度の高い回答を提供できる様にする機能です。ユーザーの好みや傾向を学習し、よりパーソナライズされた応答が可能になります

通常、チャットの内容は30日で消去されますが、メモリに記録された内容は維持されます。過去の会話コンテキストを活用することで、より一貫性のある対話を実現します

メモリされた内容はユーザーによって管理可能で、不要な記録やプライバシーに関わる記録は削除することができます。

メモリ機能の使い方

メモリは自動で保存されるため、個別に設定を行う必要はありません。会話の中から重要と思われる部分をChatGPT側で自動的に選択し保存します。

また、[この情報をメモリに保存してください]の様に明示的に指示を出すことで、ユーザー側から指定して記憶させることも可能です。

保存されたメモリについてはメモリ管理画面から削除のみ可能です。

メモリの管理方法

・アカウント>設定をクリック

・メニューからパーソナライゼーション>管理を選択

 メモリーされた情報の一覧が表示されます

・不必要な情報がある場合は選択し、削除します(削除のみ可能で編集することはできません)

・機能をオフにしたい場合はメモリーのラジオボタンを選択しグレーにする

※また画面上部のモデル選択メニューから「一時的なチャット」を選択すると、その会話セッションはメモリに保存されません。

注意点:

・ChatGPTは全ての会話セッションをひとつのメモリ機能でまとめて管理しています。該当チャットを削除してもメモリは維持されます。

・引き継ぎたくない情報については定期的にチェックして削除する必要があります。

・メモリの容量に制限があるため、定期的な整理が推奨されます

・複数人で共有するアカウントの場合は、メモリ機能をオフにすることが推奨されます

・メモリが正しく機能していない場合は、一度機能をオフにして再度オンにすることで改善する場合があります

メモリされる情報の種類 

・ユーザーの設定や好み(例:文章のスタイル、専門分野など) 

・よく使用される固有名詞や専門用語 

・定期的に行うタスクのパターン 

・ユーザーとの重要な約束事や合意事項

 ※個人情報や機密情報は原則として保存されません

メモリ機能の効果的な使用方法

例1.プロジェクト固有の文脈維持:

「この商品は20-30代の働く女性をターゲットとし、 特にメンタルヘルスケアの観点を重視したブランディングを 進めています」

「ユーザー層は環境配慮型の商品に高い関心を示しています」

メリット:

進行の前提となる情報をメモリしておくことで、背景を説明し直す必要がなく、時間を節約できます。方向性を見失うことなく、一貫した判断基準で結果を生成しやすくなります。

この例ではターゲット層に適したマーケティング施策を自動的に提案を行ってくれます。

例2.ユーザの知識レベルや現状を共有:

「私はウェブマーケティングの知識はありますが、ブランディングについては知識が不足しています」

「認知度向上のフェーズは完了し、 現在は商品のブランド価値確立に注力しています」

メリット:

ユーザーのスキルレベルやプロジェクトの現状について情報をメモリしておくことで、状況に合わせた適切な説明の提供が可能になります。過去の質問や興味に基づいて関連情報を提供しやすくなるほか、理解度に応じて段階的に専門的な内容へ発展させやすい利点もあります。

例3.問題解決の経緯追跡:

「先月のSNSキャンペーンは投稿頻度が多すぎて 逆効果でしたが、コンテンツの質は評価が高かった」

過去に発生した問題や成功/失敗要因についての情報をメモリしておくことで、より最適化された提案を生成しやすくなります。

応用事例として、プログラムのソースコードを生成する際に過去のバグ状況やうまくいかなかった解決策などを共有することもできます。これは同じエラーの再発やバグ解決に効果的な活用法となります。

カスタム設定機能(Custom instructions)の概要

カスタム設定機能(2024年10月現在は無料プランにも解放)を使う事で、精度を向上させるとともにプロンプト入力の手間を大きく節約することが可能です。

カスタム設定では、予め必要な指示を入力しておくことでチャット内容の前提情報を保持する事ができます。例えばChatGPTに求める役割をカスタム設定で指示しておけば、毎回のプロンプトで役割を入力しなくても特定の役割を維持したまま会話を進めることができます。

カスタム設定の特徴:

・ChatGPTとの対話で考慮してほしい事前情報や出力方法を追加・調整できる

・設定を行うとその後の質問すべてに適用されるため、作業時間が大幅に短縮できる

・設定を調整することで意図に合った内容、出力規則で回答が取得できる

カスタム設定機能の本質と特徴:

ユーザの要望を記憶するという点でメモリ機能に似ていますが、カスタム設定は回答に対してユーザーが形式を明示的に指定するもので、常に日本語で回答する、回答を常にステップ形式で行う。などの指定が可能です。

  1. 静的な基本設定としての役割
  • メモリ機能:会話の流れで動的に情報が蓄積
  • カスタム設定:事前に決めた一貫したルールを適用
  1. 適用範囲の違い
  • メモリ機能:特定の会話コンテキストに関連する情報を保持
  • カスタム設定:全ての会話に適用される基本ルールを設定
  1. 設定内容の編集
  • メモリ機能:一度保存された内容は編集不可(削除のみ可能)
  • カスタム設定:いつでも内容を編集可能で、次回の会話から反映

カスタム設定の使い方:

・画面右上のユーザメニューから[ChatGPTをカスタマイズする]を選択

・テキストボックスにカスタム指示を入力する

・保存するボタンを押す

※全ての会話に適用する場合[新しいチャットで有効にする]ラジオボタンをONにしておく

上記の例ではカスタム設定で会話内容を[料理]に限定している為、曖昧な質問に対しても料理についての回答されています。また口調も指示通りに出力されています。

効果的なカスタム設定例:

カスタム設定例1.出力形式の統一

・全ての説明は必ず具体例を含める

・重要なポイントは必ず箇条書きで提示 

・結論を最初に示し、その後に詳細を説明 

・専門用語には必ず簡単な解説を付記

出力形式を統一することで、情報の把握と整理が容易になります。特に長文や複雑な説明が必要な場合、一貫した構造があることで重要ポイントの見落としを防ぎ、後から必要な情報を素早く見つけることができます。また、チーム内での情報共有や報告書作成時の効率も大幅に向上します。

カスタム設定例2.専門性レベルの設定:

あなたはプロフェッショナルのパートナーコンサルタントとして、必要に応じて適切なフレームワークやテクニックを用いながら、ユーザーの質問に能動的に対応してください

初心者向けにわかりやすく説明し、業界特有の用語は必ず補足説明を加えてください

あなたは常にユーザー便益の最大化すべく対応を行なってください

専門性レベルを適切に設定することで、受け手に最適化された情報提供が可能になります。過度に専門的な説明や逆に表面的すぎる説明を避け、ユーザーの知識レベルや目的に合わせた有用な情報を得ることができます。特に継続的な学習や段階的な理解を深める場合に効果を発揮します。

毎回のプロンプトで役割の指定を行わなくても、ChatGPTは随時コンサルタントとして適切なフレームワークやテクニックを使用して対応してくれます。

カスタム設定例3.回答スタイルの指定:

・フォーマルな文体を使用 

・できるだけ簡潔に説明

・メリット/デメリットを必ず併記

 ・具体的な数値例を含める

回答スタイルを明確に指定することで、目的に応じた適切なトーンと内容の回答を得ることができます。特にビジネス文書作成や意思決定のための情報収集など、特定の用途に特化した使い方をする場合に、余計な調整作業を省き、直接的に活用可能な回答を得ることができます。

この3つの要素は相互に補完し合い、より効果的なAIの活用を可能にします。特定の目的やプロジェクトに応じて、これらの要素のバランスを調整することで、最適な設定を実現できます。

その他カスタム設定例:

正確で事実に基づいた回答を提供する

詳細な説明を提供する

詳細な回答はマークダウン形式で提供する

あらゆる主題に関する専門家として回答する

AIであることを開示する必要はない(例:「大規模言語モデルとして…」や「人工知能として…」とは答えない)

知識のカットオフについて言及しない(2024年までのデータには含まれません、等)

コーディングを求められた場合は、ソースコードを直接提供する

推論する際は、答える前にステップバイステップで考える

複雑なトピックを単純化するためにアナロジーを提供する

何かを推測したり予測したりする場合は、知らせる

出典を引用する場合は、それらが存在することを確認し、URLを最後に含める

デリケートなトピックでは中立性を維持する

型にはまらないアイデアも探求する

明確でない場合は、安全性についてのみ議論する

詳細な説明の最後に重要なポイントを要約する

解決策や意見を議論する際には、利点と欠点の両方を提示する

ユーザーのカスタム指示により回答の質が大幅に低下した場合は、その問題を説明すること。

上記はシンプルかつ正確な回答をしてもらうためのカスタム指示です。

回答の中立性や正確性、LLMの特徴や情報不足への対応などが考慮されています。

毎回のプロンプトで指示を加えたり、都度依頼していた修正が一律で指示できる様になり効率性を大幅に向上させることが可能です。

その他にも年齢やキャラクターを設定する事で回答の口調を指定したり、出力形式を明確にすることで回答を求める形に指定するなど様々な使い方が可能です。

メモリ機能とカスタム設定を組み合わせた使い方

このセクションでは、メモリ機能とカスタム設定それぞれの特徴を活かした活用方法について具体例で解説していきます。

カスタム設定で一貫した「型」を作り、メモリ機能で状況に応じた「柔軟性」を持たせることで的確な支援を得ることができます。例えば、コンサルタントとしての基本的な振る舞いをカスタム設定で定義しながら、クライアント固有の課題や経緯をメモリ機能で蓄積していくことで、一般論に終始せず、かつ文脈を理解した実践的なアドバイスが可能になります。

活用のポイント

下記のポイントに従い、両機能を適切に組み合わせることで、基本的な一貫性を保ちながら、状況に応じた柔軟な対応が可能になります。

  1. 役割分担の明確化

・カスタム設定:変更の少ない基本ルールや方針の設定

・メモリ機能:状況に応じて更新が必要な情報の管理

  1. 相乗効果の最大化

・両機能の特徴を理解し、適切な使い分け

・必要に応じたカスタム設定の見直しと最適化

・メモリ機能の情報が古くならないよう定期的な更新

メモリ機能とカスタム設定の具体事例

1.ビジネス文書作成での活用

カスタム設定:

  • 文書の基本フォーマットや文体(例:企業・業界別の文書スタイルガイド)
  • 業界固有の表現ルール
  • 必須の構成要素
  • 説得力を高める論理展開パターン
  • コンプライアンス要件の遵守事項

メモリ機能:

  • プロジェクト固有の用語や背景
  • 関係者の役職や敬称
  • 過去のやり取りの経緯

この組み合わせにより、形式面での一貫性を保ちながら、個別案件の文脈を反映した適切な文書作成が可能になります。例えば、提案書を複数回改訂する際、基本フォーマットを維持しながら、議論の進展を反映した内容の更新がスムーズに行えます。

2. 戦略的意思決定支援 

カスタム設定:

  • 業界標準の分析フレームワーク
  • 意思決定に必要な評価基準
  • リスク評価のガイドライン

メモリ機能:

  • 過去の意思決定とその結果
  • 市場環境の変化の履歴
  • 重要な判断要因の推移

ビジネス判断に必要な分析と、状況に応じた柔軟な判断材料の提供が可能になります。特に中長期的な戦略立案において、一貫した判断基準と市場変化への適応を両立させることができます。

3. 高度なカスタマーエンゲージメント 

カスタム設定:

  • カスタマージャーニーに基づく対応方針
  • 顧客セグメント別の対応基準
  • ブランドトーンの統一ガイドライン

メモリ機能:

  • 個別顧客との重要なやりとり
  • 効果的だった解決アプローチ
  • カスタマイズされた提案内容

形式的なマニュアル対応ではなく、顧客との関係性を深める戦略的なコミュニケーションが可能になります。特にハイバリュー顧客への対応や、複雑な要望への対応において効果を発揮します。

4. パーソナライズド学習支援 

カスタム設定:

  • 学習目標に基づく指導方針
  • 効果的な学習ステップの設計
  • モチベーション維持の工夫

メモリ機能:

  • 個別の学習進捗状況
  • 効果的だった説明アプローチ
  • 克服した課題とその方法

学習者一人ひとりの状況に応じた最適な支援を提供しながら、一貫した学習効果を実現できます。特に長期的なスキル開発や資格取得支援において、着実な成果を上げることができます。

各シナリオにおいて、カスタム設定で「質の標準化」を図り、メモリ機能で「状況への最適化」を実現することで、人間の専門家に匹敵する高度な支援を実現できます。

まとめ

ChatGPTをより効果的に活用するためには、メモリ機能とカスタム設定の特徴を理解し、適切に組み合わせることが効果的です。このテキストで学んだ内容を実践に移す際は、まずは簡単なタスクから始めて、徐々に活用範囲を広げていくことをお勧めします。

実際の運用でプロンプト入力が繰り返しになった部分からカスタム設定に組み込んでいくなど、段階的にレベルアップすることでより効果的な使い方をマスターできます。